昭和3年(1928年)に熊本県天草下島の北西端に設立された天草臨海実験所は、東シナ海の一部である天草灘、日本屈指の内海である有明海、八代海に囲まれた地の利を活かし、海洋生物学、特に海を中心とした広義の水域生態学の教育・研究に従事しています。
天草下島には岩礁、転石浜、干潟など多彩な環境と温暖な海況を反映して多様な海洋生物がみられ、また海草藻場、サンゴ群集なども豊富です。歴代スタッフの努力により、海洋生物相は日本で最も明らかになった海域でもあり、教官及び大学院生・卒論生は、これらの豊富な海洋生物及び沿岸に接する海浜生態系・陸水(河川)生態系を対象に、個体群生態学、群集生態学に関する研究を行っています。研究面では、九州沿岸にとどまらず南西諸島、東南アジア、南太平洋、インド洋、南米西岸など、世界各地で調査を行い、生物の多様性および生物群集の構造や種間関係についての研究を行っています。
実験所は実験棟とその付属施設及び学生宿舎から成り、実習船セリオラを擁しています。実験所には大学院生が常駐し、スタッフとともに研究を進めています。留学生・外国人研究者が多いことも実験所の特徴です。主として夏季に行われる学部生・院生を対象とした臨海実習は、これら留学生から英語で指導を受ける機会もあり、また天草の豊かな自然環境を堪能できる野外実習として好評を得ています。