人類が獲得した知的財産の根源をなすものは言葉であり、数と形の認識およびその表現、運用能力です。数と形が織りなす様々な構造の研究と、そこから生まれる数学的なものの考え方は古くより文化の発展と人類の繁栄をささえてきました。とりわけ、近代以降の科学技術の進歩は数学なくしては考えられません。今もなお、新しい数学の研究が盛んに行われ、新たな知の世界の構築に大きく貢献しています。情報化と国際化がますます進む現代にあっては、数学を学ぶことを通して得られる論理的な考え方や、普遍的で自由なものの見方が強く求められています。
理学部数学科では、豊かな創造性に富んだ現代数学の概念や方法の基礎を修得させ、数学の先端研究をめざす者や教育者、数学の力を基盤として活躍できる技術者など、多様な分野で指導的な役割を果たす人材を育成したいと考えています。
わが国における数学教育研究をになう中核機関のひとつとして、1994年に数学の独立大学院である数理学研究院が、2011年には、マス・フォア・インダストリ研究所が発足しました。数学科の教育は、この数理学研究院及びマス・フォア・インダストリ研究所に所属する約70名の教員が担当しています。本学科では、純粋な知的好奇心を原動力とする数学研究から、社会に役立つ数学研究まで、最前線の幅広い研究成果を垣間見ながら、高校数学では触れられない数学の抽象的な考え方や厳密な理論構成を学び、現代数学の基礎知識を身につけるとともに、その美しさを味わうことができます。現代社会を支える計算機の発達は数学を基礎としたものです。数学の基礎理論のみならず、計算機を背景とする数学の科学技術への応用の一端に接することができるのも本学科の大きな特色です。このような、純粋理論から科学や技術への応用までを視野におき、調和のとれた数学の教育・研究を行っているのはわが国では本学科(と大学院数理学府)をおいてありません。
高校までの基礎学力が十分にそなわり、数学が好きである学生、あるいは自然科学、情報科学、社会科学の数理的側面に旺盛な好奇心をいだく学生を歓迎します。また、自らの興味や疑問をいだいた数学的問題にたいし、じっくりと取り組んで考えるねばり強さや、自分の考えを人(友人、先輩、先生など)との議論を通しさらに深めていこうとする姿勢を尊重します。
入学者選抜の方法として、一般入試(前期日程のみ)および総合型選抜II(AO入試)があります。
一般入試においては、筆記試験によって、高等学校で学習した基本的知識を確実に修得していることや論理的思考力や記述力を判定し、数学に深い関心を持つ学生を選抜します。前期日程では、幅広い科目内容を着実に身につけていることが要求されます。
総合型選抜II(AO入試)においては、個別学力検査を免除し、書類選考(第1次選抜)を経た後、第2次選抜として、総合評価(大学入学共通テスト、課題探求試験、面接試問に基づくもの)による選考を実施し、入学者を選抜しています。総合型選抜II(AO入試)においては、志望者の数学に対する関心の強さや適性に的を絞った入学者選抜を行います。
なお、上記のほか、高等専門学校等の卒業生を対象とした3年次編入学試験を実施しています。