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九大理学部ニュース

地惑太平洋十年規模変動と同期する東アジア全域の台風による極端降水の近年の増加が明らかに

川村 隆一、呉 継煒

令和 6 年 8 月に理学研究院 地球惑星科学部門の川村 隆一 教授らの研究グループは、『太平洋十年規模変動と同期する東アジア全域の台風による極端降水の近年の増加が明らかに~台風災害のリスクアセスメントに貢献~』のプレスリリースを行いました。本研究グループには、呉 継煒さん (博士後期課程 1 年) が現役の学生として参加しており、今回のプレスリリースに至った研究についてお話を伺いました。

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地惑赤ちゃん星の"くしゃみ"を捉えたか?

町田 正博、徳田 一起、所司 歩夢、野﨑 信吾、大村 充輝

令和 6 年 4 月に理学研究院 地球惑星科学部門の町田 正博 教授、徳田 一起 特任助教らの研究グループは、『赤ちゃん星の"くしゃみ"を捉えたか? ~アルマ望遠鏡が目撃したダイナミックな磁束放出~』のプレスリリースを行いました。本研究グループには、所司 歩夢さん (博士後期課程 1 年)、野﨑 信吾さん (博士後期課程 1 年)、大村 充輝さん (修士課程 2 年) が現役の学生として参加しており、今回は、プレスリリースに至った研究について 3 名にお話を伺いました。

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化学光の物理で生物を見る化学の世界

吉村 美波

生細胞や生体組織のはたらきを理解するためには、生きたままの状態を観察することが重要です。そのような観察をする際に、組織内の注目したい物質に対して、蛍光タンパク質などの観察に好都合な物質を結合させることがよく行われます。しかし、他の物質を結合させて標識した状態では、注目したい物質の性質が変わってしまい、本来のふるまいを観察できなくなるかもしれません。そこで、光物理化学研究室 (加納 英明 教授、平松 光太郎 准教授、桶谷 亮介 助教) では、レーザー光を使って、標識物質を使わないラベルフリーな観察手法を用いた研究を行っています。今回は、そのような方法の一つである非線形ラマン分光法で脂肪組織の観察を行っている化学専攻の吉村 美波さんにお話を伺いました。

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数学割れる?割れない?ゲーベルの不思議な数列

松比良凜ノ介、土田煌己、松坂俊輝

数学科の 1 年前期では、コアセミナー I という専攻教育科目を受講することになっています。数学科の 1 年生が 4 つのグループに分かれ、各グループを担当する数学科の教員が設定した課題図書を読み進めていきます。松坂助教が担当するクラスでは、「せいすうたん 1」という本を毎週 1 話ずつ進めていき、各話の担当者が勉強してきたことを発表します。1 年生の松比良さんと土田さんはゲーベル数列という数列を取り扱った話が担当で、2 人は「せいすうたん 1」には明記されていなかった未解決問題を自ら設定し、その答えについて予想と考察を発表したそうです。その発表を聴いた松坂助教は「問題設定としては完璧、これは面白いことができる」と感じ、3 人でその問題に取り組むことになりました。松坂助教のサポートにより、2 人の予想が正しかったことが証明され、その成果は論文として掲載されることが決まっています。

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生物ツクツクボウシの鳴き声の転調部に潜む生物学的意味

児⽟ 建

ツクツクボウシの鳴き声は「オーシンツクツク」から「ツクリヨーシ」と途中でパターンが変化しますが、このような変化は他の鳴く昆虫には見られない珍しいものです。誰しもが聞いたことのある鳴き声にもかかわらず、このパターンの変化にどのような適応的意義があるのかについては明らかになっていませんでした。そこで、システム生命科学府 生態科学研究室の児⽟さんは、録音したツクツクボウシの鳴き声を他のツクツクボウシに聞かせるプレイバック実験を行い、「オーシンツクツク」のパートと「ツクリヨーシ」のパートでそれを聞いたオスの反応が異なることを発見しました。この研究は、大阪公立大学 大学院理学研究科 客員研究員 (元 九州大学 大学院理学研究院 准教授) の粕谷 英一 博士、九州大学 大学院理学研究院 生物科学部門の立田 晴記 教授と共同で行われました。

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地惑宇宙物質流入と地球生命史

佐藤 峰南

近年の研究では、宇宙からの物質が地球に流入することで、生命に不可欠なリンや鉄などの元素が供給され、生命の進化が促進されたり、反対に大量の宇宙物質が短期間で地球に流入することで寒冷化や生物絶滅が引き起こされたりするといった説が注目されています。これは地球科学の中でも新しい視点であり、かつ非常に重要なテーマです。私たちは、日本の深海底に堆積した岩石を調査し、地球の歴史における宇宙物質の流入量の変化を追うための手法と分析技術を開発してきました。その結果、過去 3 億年間の深海底堆積岩から、これまで報告されていなかった小惑星の衝突が 3 回起きたことや、宇宙からの塵が大量に流入したイベントが 2 回あったことが明らかになりました。これらのイベントが発生した時代には、突発的な生物の絶滅や進化が記録されており、宇宙物質の流入量の変動が、地球の気温や大気の組成の変動と同じく、生命の歴史において重要な役割を果たしていることを示しています。このような研究成果により、令和 5 年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞 (研究部門)」を受賞しました。

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数学解けない方程式の中の解ける方程式たち

重富 尚太

求めたい関数の微分を含む関係式を微分方程式といい、特にその関係式の中に求めたい関数の二乗などの項を含むものは、非線形の微分方程式と呼ばれます。また、微分方程式をみたす関数のことを解と呼びます。この手の方程式は、ほとんどの場合、厳密な解を見つけることができないことが知られています。しかし、その中にも偶然、解を具体的な数式で表すことができてしまう場合があり、数学や物理学の興味の対象となっています。今回は、おもちゃとして簡単な工作で作ることができ、工学などへの応用も期待されるカライドサイクルという面白い動きをするヒンジ機構に現れる非線形な方程式とその解について研究されている大学院数理学府の重富 尚太さんにお話を伺いました。この研究は、マス・フォア・インダストリ研究所の梶原 健司 教授、鍛冶 静雄 教授と共同で行われています。

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物理光で回る液晶液滴

齊藤 圭太

レーザー光を集光することで、焦点付近に微小な物体を捕捉する技術を「光ピンセット」といい、この技術を利用することで、細胞などの小さくて柔らかいものを精密に制御することが可能となります。光学異方性を持つ物体であれば、光電場の振動方向が回り続ける円偏光を照射することで、物体を回転させることもできます。この回転は、非接触で制御できることから、マイクロ流動場デバイスとして有用であります。デバイスとして応用するためには、そのエネルギー効率が重要となります。そこで本研究では、内部構造の制御が容易な液晶液滴 (光学異方性粒子) を用いて、その内部構造と回転メカニズムの関係を調べ、エネルギー変換効率の評価を行いました。さらに、エネルギー効率の高い液滴を用いて、制御可能なミクロ流動場の構築に成功しました。

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数学無限次元の球はただの点!?

数川 大輔

図形や空間を研究する分野を幾何学と言います。多角形や多面体のような辺や面からなる図形から、球面のように曲がった空間、さらには専門用語でリーマン多様体と呼ばれる対象など様々なものが研究されています。とりわけ微分幾何学と呼ばれる分野では、空間の上の 2 点を結ぶ最短線を求めたり、空間の曲がり具合を調べたりすることでその空間がどういう形をしているのかを把握していきます。近年、この分野に空間列の収束という新しい考え方が持ち込まれました。高校で習う「数列の収束と極限」のように、空間を少しずつ動かしていくと、空間の性質がどのように変わるのか?また極限に現れる空間はどういう形をしているのか?そのような問題に答えていくのが空間の収束理論です。中でも私 (数理学研究院 数学部門 助教 数川大輔) は次元がどんどん大きくなって無限大になるような空間列に興味を持って研究しています。

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化学紫外線を当てるだけのカンタン脱硫術

篠﨑 貴旭

石油は、種々の乗り物の燃料などに使われており、脱炭素化が叫ばれる今日においても、依然として人々の暮らしに欠かせないものとなっています。石油の主成分は炭素原子と水素原子からなる炭化水素ですが、不純物として硫黄原子をもつ化合物なども含まれています。この硫黄分は、燃焼時に硫黄酸化物として排出され、環境や人体に影響を及ぼすだけでなく、ガソリンや軽油を燃料とする自動車の性能を悪化させる要因にもなります。これまで水素化脱硫と呼ばれる大規模な設備を要する方法で、石油中の硫黄分の除去が行われてきました。しかし、大型の設備が必要であるがゆえに、国や地域によっては今なお脱硫が不十分な石油が流通しています。そこで、触媒有機化学研究室 (徳永 信 教授、村山 美乃 准教授、山本 英治 助教) に所属する化学専攻の篠﨑 貴旭さんらは、より簡便な脱硫法を模索し、紫外線を照射するだけで硫黄分が除去できる手法を見出しました。

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