セミはオスのみが鳴き声を発する動物であり、その鳴き声をオス同⼠の競争やメスに対するアピールに⽤いていると考えられています。この中でもツクツクボウシというセミは、その鳴き声のパターンが「オーシンツクツク」から「ツクリヨーシ」へと途中で変化するという、極めて珍しい特性を持っています。⼀⽅で、鳴き声を途中で変化させることの⽣物学的意義は、これまで明らかになっていませんでした。
本研究は、ツクツクボウシのオスが「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートに対して、それぞれ異なる頻度で応答することを明らかにしました。
九州⼤学 ⼤学院システム⽣命科学府 博⼠学⽣の児⽟ 建 ⽒、⼤阪公⽴⼤学 ⼤学院理学研究科 客員研究員の粕⾕ 英⼀ 博⼠および九州⼤学 ⼤学院理学研究院 ⽣物科学部⾨の⽴⽥ 晴記 教授らの研究グループは、ツクツクボウシの鳴き声の「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートそれぞれをスピーカーで再⽣し、捕獲したツクツクボウシのオスに聞かせる実験を⾏いました。ツクツクボウシでは、オスが鳴いている際に近くにいる別のオスが「ギーッ」という”合の⼿”を⼊れることが知られています。こうした⾏動に着⽬し、異なる⾳声データを再⽣して合の⼿の頻度を⽐較したところ、「オーシンツクツク」パートを含む⾳声により多く合の⼿を⼊れて応答しました。
今回の発⾒は、ツクツクボウシの鳴き声が途中でパターンを変えることで、他のオスの⾏動を変化させることを初めて明らかにしました。今後はオスの変化する鳴き声が繁殖上どのような意義を持つのかを調べることで、ツクツクボウシの⾳声コミュニケーションの実態解明を進めて⾏きます。
本研究の成果は、Wiley-Blackwell 社の雑誌「Entomological Science」に 2023 年 5 ⽉ 29 ⽇ (⽉) (⽇本時間) にオンライン掲載されました。 (https://doi.org/10.1111/ens.12550)。
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