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川井 隆之 准教授、松森 信明 教授、鳥飼 浩平 助教、劉 晨晨 助教、三木 太陽さんらの研究グループが、高感度かつ網羅的な糖鎖解析技術を開発しました。

  • 2024年8月8日(木)

    発表のポイント

    • 細胞の「顔」である糖鎖は診断や治療の指標として非常に重要
    • 新たに開発した二次元分離技術により、微量糖鎖の網羅的な分析を実現
    • 細胞数が少なく検出が難しいがんの早期診断などへの応用が期待

    概要

     タンパク質のアスパラギン残基に結合する「N 結合糖鎖」は重要な翻訳後修飾の一つであり、いわば細胞の「顔」として機能しています。例えば、血液型も細胞表面の糖鎖構造によって決まっています。この糖鎖の種類や量は細胞の状態によって大きく変化するため、診断や治療の標的分子としての利用が期待されています。しかし、早期のがんなどでは細胞数が少ないため、限られた試料に含まれる糖鎖を高感度かつ網羅的に検出する技術が必要です。

     既存の N 結合糖鎖分析技術として、液体クロマトグラフィー (LC) 、キャピラリー電気泳動 (CE) 、質量分析などが挙げられますが、いずれも分離度や感度のどこかに欠点があり、多種類の糖鎖を完全に分離して高感度に検出することは困難でした。

     そこで九州大学 大学院理学研究院の川井 隆之 准教授、松森 信明 教授、鳥飼 浩平 助教、劉 晨晨 助教、三木 太陽 大学院生 (当時) と近畿大学 薬学部の山本 佐知雄 准教授、木下 充弘 教授らの共同研究グループは、LC と CE という 2 つの分析法を組み合わせて欠点を補い合った二次元糖鎖分離法を新開発しました。この方法により、今までメジャーな糖鎖の影に隠れて検出できなかったマイナーな微量糖鎖を分離して検出できるようになりました。検出下限は 12 pM (pM = 10-12 mol/L) であり、これは角砂糖 1 個半 (約 5 グラム) を東京ドーム一杯の水 (1240 万立方メートル) に溶かしてもまだ検出できるレベルの感度です。この方法により、限られた数の細胞からでもマイナーな糖鎖を含む詳細な糖鎖プロファイルを取得できるようになりました。今後、がんの早期診断や治療に向けたバイオマーカー探索などへ広く応用されていくことが期待されます。

     本研究成果は、オランダの国際科学誌「Analytica Chimica Acta」に 2024 年 8 月 7 日 (水) 午前 7 時 (日本時間) に掲載されました。また本研究は AMED-PRIME 等の助成を受けたものです (https://doi.org/10.1016/j.aca.2024.342990)。

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