日本を含む東アジアにおける台風災害リスクの将来予測は喫緊の課題です。しかしながら、台風の遠隔降水の同定が困難なため、東アジア全域の台風による極端降水の実態さえよくわかっていませんでした。本研究で、九州大学 大学院理学府 博士後期課程 1 年の呉 継煒 大学院生、同大学院理学研究院の川村 隆一 教授らの研究グループは、台風による極端降水の全容解明のために、陸域降水量観測及び大気再解析データを併用して、台風本体の降水 (コア降水) と遠隔降水を分離・同定する新しい客観的手法を開発しました。解析結果から、台風遠隔降水は西日本と朝鮮半島に大きなインパクトを与えていること、台風降水域で領域平均された日降水量が 50 mm 以上の日数は今世紀に入って東アジアで 2.2 倍ほど急増していることなどを明らかにしました。また台風経路は太平洋十年規模変動と同期しながら今世紀に入って大陸側にシフトしており、極端降水の増加には台風コア降水が大きく寄与していることと矛盾しないことがわかりました。
これらの知見は、将来気候下の台風災害のリスクを考えるにあたって、台風コア降水と台風遠隔降水を適切に評価する必要性を強く示唆しています。また気候システムの自然変動である、太平洋十年規模変動による台風リスクの長期的変化の普遍的理解は、地球温暖化の進行によって予想される台風リスクの精度向上にも資することが期待され、結果的に将来予測の不確実性 (激甚化するか否か) を低減していくことに繋がります。
本研究成果は、2024 年 8 月 15 日 (木) に国際学術誌「Weather and Climate Extremes」にオンライン掲載 (早期公開) されました (https://doi.org/10.1016/j.wace.2024.100714)。また本研究は JSPS 科研費補助金 (JP20H00289, JP24H00369) の助成を受けました。
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