マグマ
溜り
3-16: 雲仙火山のマグマ溜り

第3部目次
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 雲仙火山のマグマ溜りは, 西側の 橘湾「千々石カルデラ」 とし, その地下10数kmの深さに 潜在するとした説が, 太田 (1972; 前島原地震火山観測所長)によって 提唱されています. 今回の噴火で得られた諸観測の 結果は,この 橘湾説 調和的でした.
 太田教授は雲仙火山における 温泉の泉質・温度等に関する 研究結果や,1970年前後の 群発地震の震源の移動の データを考慮して 橘湾説を提唱しました.
 雲仙火山には,西海岸に 高温の食塩泉,中央に 硫黄泉,東海岸には やや低温の炭酸泉が 湧出しています. 温泉の源はマグマに由来する ガス成分ですが, 地中を移動する過程で 地下水に分別溶解し, その組成を変えます. そのため,温泉の泉質は マグマ溜りからの遠近, 標高差によって差異が 出ます.
 雲仙火山の温泉群が 同一のマグマ溜りに 由来するとすれば, これらの温泉群の 泉質の違いや,雲仙の 地質構造,それから 1970年前後の 群発地震の震源が西部深部から 東側へ繰り返し 移動したことを考慮すると, マグマ溜りの位置は 橘湾地下10数kmの 深さになければならないという, 太田教授の 橘湾説 になるわけです.
 今回の噴火の前後 (1980.11.〜1991.12.) に観測された 地震活動の震源分布 と, 噴火後の雲仙の 地盤変動 のデータが下に示されています. これらのデータは上の 橘湾説 調和的であると 考えられます.

  ● 地震活動から推定されたマグマ溜り
震源は橘湾地下深部から 普賢岳へ向かって 波状的に上昇しました. そこで,「主マグマ溜り」を 橘湾の震源域の直下とし, 今回の噴火で確認された 測地学的収縮源(下図のD) を「第2マグマ溜り」と 考えました. (九大島原地震火山観測所, 1994)
 

  ● 地盤変動から推定されたマグマ溜り
噴火後の地盤沈下の 収縮源は,水準測量では D地点の深さ10km, GPS測量(汎地球測位システム)による 水平変動ではG地点の 深さ11.5kmでした. (京大・大学合同観測班 測地グループ,1995)
 

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