火砕流
堆積物
3-17: 火砕流堆積物(その1)

第3部目次
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 普賢岳噴火に伴って 発生した 火砕流 は, ドームを形成した溶岩の 崩落によって発生 したものです.
 溶岩は多数の気泡を含んでいて, もろく,たいへん壊れやすい 状態でした. 従って,粉々に砕けた溶岩片 ・火山灰・水蒸気の 高温混合体 火砕流となって, 高速 で水無川を 流れ下りました.
  火砕流に伴う噴煙:  水蒸気の放出による.
  高速で流れ下る理由:  水蒸気により地面との間の摩擦抵抗が少ない.

 

  ● 溶岩内に気泡ができるメカニズム
 地殻の深いところにあるマグマは 一般に水を含んでいます. マグマに水がどれだけ溶ける ことができるか(溶解度)は, 図1の左に示すように, マグマに働く 圧力(従って 深さによります.
 火山噴火にともなって, マグマが火口近くまで上昇してくると, 圧力は下がり, 水が溶けることのできる度合い 溶解度)は 急激に減少し, 溶けていた水分は 水蒸気 として分離し, マグマに 気泡 が出来ます.
 

  ● マグマ内に溶けている水分の量 と溶岩噴出の様子
 普賢岳噴火の場合, マグマに含まれていた水の量が 1%弱と少なかったために, 気泡を含んだ溶岩は 山頂にドームをつくる ことになりました.
 水の量がもっと多かったら, マグマは上昇しながら発泡し, 気泡は拡大して ピナツボ火山に見られたような 大爆発を起こした かも知れません.

 下の 図2図3溶岩噴出開始日( 1991.5/20) から日数が経つに従って 噴出する溶岩の中の 気泡の割合の変化を 示しています. 図3 からわかるように, 普賢岳から噴出した溶岩 に含まれる気泡の割合は, 噴火期間を通して 平均的にはほぼ一定で, 体積にして約20% だったことが分かります.
 ただ1つの例外は, 溶岩噴出開始23日目の 6月11日に, 極めて小規模の爆発が 観測されています. この時放出された噴石は 密度1000kg/m3の軽石で, 気泡の割合は60%にも 達していました(図2). 爆発はこの1例のみでした.
 

  ● 溶岩の化学組成
  図4 には溶岩の化学組成の 時間変化を示しています. 溶岩の化学組成は 噴火期間を通して デイサイト と呼ばれる組成で ほぼ一定していました. 強いて言えば, 初期に結晶をより多く 含んだ溶岩が噴出しています.
 


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