溶岩 3-8: 溶岩ドームの形成


第3部目次
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 地獄跡火口で噴火を始めた 溶岩は,珪酸 (SiO2 )分 64%のデイサイトでした. 若干の流動性があり, 頂部に冠状に膨らんだり, あるいは東斜面に舌状に突き出した 溶岩ローブ」(Lobe) が 次々と出現しました. 先に出ていたローブを突き崩しながら, 最終的には ひとつの巨大な 溶岩ドーム を形成しました.



  マグマ供給量の推移 (東大・山科健一郎助教授)
   今回の噴火では, 火口周辺に設置した 傾斜計の 長周期振動の振幅が, 溶岩噴出量に比例していることが 判明し,日々のマグマ供給量が 推定されました. 噴出量の絶対値は, 国土地理院の 空中写真測量結果に準拠した 経験式が考案されました. 東大の山科健一郎助教授の 着想による 世界の火山観測史上 始めての快挙でした.
 この変動は,実際の溶岩噴出に 数日先行していたことから, 地元での防災上の 重要な判断材料となりました.

 



  溶岩噴出による地盤沈下 (大学合同観測班測地グループ)
   約2億立方メ−トルの 溶岩噴出によって, 西側の橘湾(千々石カルデラ) に面した国道251号線は, 小浜町北野(水準測量点T119) で最大8cmも沈下しました.
 雲仙岳西部の広域にわたっての 地盤変動観測の結果, D点(下図の赤い印)の地下 約10kmにその収縮源 (第2マグマ溜り)が 潜んでいることがはっきりしています. なお,橘湾地下深部に想定されている 主マグマ溜りは深く, このルートの地盤変動への 影響は,第2マグマ溜りによる 変動量に埋没しているものと 思われます. また,橘湾が海域であるために, 湾を取り囲むような 十分な観測が なされていません.

 



  雲仙火山溶岩ドームで形成された
ローブ・破砕溶岩丘の成長形態概念図
   噴出する溶岩の形態は, 1日当たりのマグマ供給量が 10数万立方メートルより 多い時には,概して 半流動性の「溶岩ローブを形どり,少ない時には 地下で冷却して固まって, 上昇通路(火道)の直上である もとの地獄跡火口の位置に 溶岩塊を押し上げて, 砕石の山のような 破砕溶岩丘を盛り上げました.
 溶岩ローブは,噴出口では 花びら状に開き, 平坦地に噴出する場合には ずんぐりと盛り上がり, また,傾斜地に噴出するときには 舌状にのびました. 舌状のローブは 初期段階では, 噴出時の花びら構造を 保持したままゆっくりと 押し出されるため, 縦断方向に2分する溝 (bisecting crease structure) が見られましたが, 成長するに従って 先端部が冷却し 流動性を欠くようになると, やがて衝上げられて, 横皺のある扇状に 形を変えました.

 



  溶岩ローブ復元図
   14個のローブの それぞれの最大成長時の 輪郭を復元し, 図上に重ね合わせたもので, 現在では 11-B を除いて 原型をとどめているものは ありません.

 

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