傾斜
観測
4-6: 傾 斜 観 測

第4部目次
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 傾斜観測地盤の変動を観測する 方法の1つです. 傾斜計を用いて 地面のごくわずかな 傾きの変化を 検出します.
 気泡管の原理を利用した 傾斜計 は, 高感度にもかかわらず たいへん小型で, 野外観測に適しています. そのため,雲仙普賢岳の 噴火時には,火口近くに 複数設置され, マグマが火口直下の 浅いところまで上昇しつつある 証拠をとらえることに成功しました. (図1)
 また,爆発的な噴火に伴って 火山内部の圧力が変化する 様子もとらえられました. (図2)
 この他,傾斜データを 用いて溶岩ドームへの マグマ供給量計算する方法が考案され, 火山活動のレベルの 即時把握に役立てられました.


  溶岩ドーム出現前の傾斜変化と, それから推定される マグマ上昇の模式図

  溶岩ドーム出現の 1週間ほど前から, 火口の西700m の地点に置いた傾斜計が 山頂方向上がりの 傾斜変化を記録しました. 1マイクロラジアンは, 1km先の地面が1mm 上下する傾きに相当します.
 

  火口直下数100m の深さでは,マグマは シート状に 貫入しながら上昇したと 考えられます.
 


  爆発的噴火に伴う 傾斜変化と, それから推定される 地下マグマの動き

  1991年6月8日の 爆発的噴火に伴って, 最初は急激な火口方向の 沈下が起き,その後数時間は 火口方向上がりの 傾斜変化が観測されました.
 

  爆発的噴火で約4万立方メートル のマグマやガスが 600〜800mの深さから 急激に放出されましたが, その後数時間で放出量の 約3分の2が深部から 補充されたと 考えられます.
 


トップ 気泡式傾斜計
  円筒容器の直径は約10cm

  気泡式傾斜計の原理 は簡単です.
傾斜センサーは, ガラス管の中に 電解液気泡注入した気泡管です.
管内には図のように3つの電極, A,B,Cが置かれています. 地面が 下の図のように 傾斜した場合, 気泡は右に移動し 電極 は導体である 電解液に広く覆われます. 反対に電極 絶縁体である気泡に広く覆われます. その結果,傾斜状態では 水平状態に比べて電極 A−C間の電気抵抗は減少し, 電極 B−C間は増大します. このようにして, 傾斜変化を電気的に 検出することができます.
 


 


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