| 溶岩 | 5-5: 雲仙普賢岳の溶岩を顕微鏡で見る |
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雲仙普賢岳 の今回の噴火は
どのようなマグマによる
ものであったか,
噴出した 溶岩 を
顕微鏡で調べてみました.
その結果,2種類のマグマが
地下で混じったものであることが
分かりました.
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| 岩石を顕微鏡で見るには | |
岩石を
極く薄くなるまで削り,
厚さを 0.01 〜 0.03mm にすると,
ガラスや
珪酸塩鉱物は光を通します.
そのため
岩石の 構成鉱物 や 構造 を
顕微鏡で観察することができます.
(磁鉄鉱や硫化鉄鉱の様な
金属光沢を持ったものは,
薄くしても光を通しません.
しかし,光を通さない鉱物は
1%以下しか含まれていませんから,
観察に
支障はありません.)
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| 溶岩の中の結晶 | |
地殻の浅いところにある
マグマ溜り では,
低温 の デイサイトマグマの
結晶作用 が進み,
低温で安定な鉱物が
結晶を作っています.
そこへ
高温 の 玄武岩マグマ が
入ってくると,
既に析出していた
鉱物の結晶は
加熱され,溶けたり
分解したりします.
前ページで説明した
安山岩溶岩 は
多くの場合
このような状態です.
下の顕微鏡写真(写真1,
写真2,
写真3)
で分かるように,
今回の雲仙普賢岳の
噴火のマグマは
正にこのような
性質でした.
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| 写真1: 普賢岳の溶岩中の石英 | |
今回の噴火で噴出した溶岩中の
石英 の写真です.
写真中央部左の
菱形の 白色部(透明) が石英です.
周囲は噴出に伴って
急冷された
メルト(溶融)部分で
小さな結晶がたくさんできています.
石英の中に
3カ所少し色がついている
部分があります.
これらは
いずれも石英が溶けてできたメルトです.
メルトの中に
不透明鉱物が含まれています.
石英はマグマの結晶作用では最後
(低温)
に現れ,
900度以下で安定な鉱物 です.
デイサイトマグマから
結晶したとき
石英は 6角形 の
そろばん珠 の様な形で,
断面はきれいな 菱形 です.
石英を加熱して溶解すると,
そろばん珠は丸みをおび,
形がいびつになり,
中空の穴もできます.
写真1 の石英は,
正にそのようなもので,
加熱され溶け始めている ことを
示しています.
実験では石英は
数日で溶けて
なくなってしまいます.
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| 写真2: 普賢岳の溶岩中の斜長石 | |
今回の噴火で噴出した溶岩中の
斜長石 の写真です.
写真中央 の
隈取りのあるひょうたん型
がそれです.
白色の隈取り部
(最外層)
(矢印)
と
中央部
(矢印)
は 透明 です.
第2層 は
非常に汚くなっています.
ミクロンサイズの
小さなガラス粒が
たくさんできているためです.
デイサイトマグマの中で
結晶した融点の低い斜長石は,
新たな高温のマグマにより
加熱されて
その表面が 分解溶融 します.
そのまま固まったものが
第2層 です.
その周囲の 最外層
(隈取り部分)は,
溶融後,溶岩の冷却に伴って
再結晶 したものです.
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| 写真3: 普賢岳の溶岩中の角閃石 | |
今回の噴火で噴出した溶岩中の
分解溶融した
角閃石 の写真です.
写真中央の2つ
(矢印)
がそれです.
角閃石 はもともと緑褐色の鉱物ですが,
中に含まれていた
第1鉄が酸化して
微細粒子の磁鉄鉱となって析出するため,
不透明の部分がたくさんできています.
更に,角閃石が
分解溶融 してできる鉱物が
2重の層 をなして,
角閃石を取り囲んでいます.
この角閃石も,もともと
低温のデイサイトマグマから
結晶したものですが,
新たな高温のマグマにより
加熱されて分解溶融する
結果となりました.
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